●自分の死後、相続で争いが起きそうなので準備したい。
●遺言を残したいが、作成の方法がわからない。
●老後の面倒を見てくれた子どもに多くの財産を残したい。
●元気なうちに相続のことをきちんと整理しておきたい。
このような不安がある場合は、遺言書をのこしておくことが大切です。
遺言は、遺言者の最終意思を死後に実現することを、法的に保障する制度です。
そのため、どのような内容でも法的な効果があるのではなく、効力が発生する内容は、以下のとおり法律で定められています。
1. 結婚外でできた子を自己の子であると法的に認めること(認知)
2. 未成年の子供の後見人や、その後見監督人を指定すること
3. 自分の死後に遺産を誰かに与えること(遺贈)
4. 誰にどれだけ相続させるかを決めること
5. 相続人の資格を廃除すること。または廃除を取り消すこと
6. 遺産分割の方法を決めること
7. 遺言の内容に書かれている手続を実行する者を決めること
8. 遺留分減殺の方法を指定すること
なお、「家族で仲良くしなさい」「借金をしないように」などの内容は、付帯事項といって、遺言者の気持ちを伝えることはできますが、法的効力は発生しません。
遺言書には、主に3つの種類があります。
(1)公正証書遺言
(2)自筆証明遺言書
(3)秘密証書遺言
公正証書遺言は、公証役場にて、公証人の面前で、証人立会いのもとに、口述した遺言の内容を筆記してもらい作成します。無効となる可能性が少なく、改変や紛失の心配もありません。
公証人への手数料など費用はかかりますが、その後の紛争を防ぐには最も安全で確実な方法です。
以下の人は、証人になることができません。
●未成年者
●推定相続人、受遺者、またはその近親者(配偶者、直系血族に限る)
●公証人と一定の関係にある人(配偶者、4親等内の親族、書記、雇い人)
公証人は、口述された内容を筆記、もしくは、弁護士の作成した書面の内容を確認したうえで、遺言者と証人に対して読み聞かせ、正確に記述されていることを確認し、遺言者と証人は署名押印をします。
最後に、この遺言がきちんとした方式に基づいているかを確認した公証人が、その旨を付記し署名押印して完成となります。
公正証書遺言の原本は、公証役場で20年間保存され、正本は遺言者に交付されます。
自筆証書遺言は、遺言の基本的なパターンであり、特別な手続きを要せず、比較的簡単に書くことができます。
遺言を残したい本人が、全文を自ら書いて作成します。代筆やパソコン・ワープロでの打ち出しは認められていません。
日付と署名押印をして、基本的な遺言書は完成となります。
なお、平成31年1月13日以降に自筆証書遺言をする場合には、パソコン・ワープロで打ちだした財産目録の各頁に署名押印をすることを条件に遺言書を作成することができるようになりました。
うまく書けないなどの事情で他人の手を借りて記載すると、他人の意思が介在する恐れがあると判断され、遺言自体が無効になる可能性がありますので、この場合は公正証書によって作成しましょう。
秘密証書遺言は、書いたものに封をして公証役場へ持参し、それが本人のものであると証明してもらうという点で、自筆証書遺言と異なります。
秘密証書遺言は、必ずしも自筆によることを要しませんので、パソコン・ワープロでの打ち出しによる作成も可能です。ただし、署名は自筆しなければなりません。
封をしたら遺言書に押印したものと同じ印で封印をします。
できあがった封書は、公証人1人と証人2人以上の前に提出して、住所・氏名と本人のものに違いない旨の宣誓をします。
それに基づいて公証人が、遺言者・証人とともに封書に署名押印して、完成となります。